ロレックスの製造工程を徹底解説
ロレックスは、どのように作られているのでしょうか。
正規店や並行店で目にする完成品からは想像しにくいですが、1本のロレックスが完成するまでには、設計、素材の製造、ケースやブレスレットの加工、文字盤やムーブメントの製造、組立、そして厳格な検査まで、多くの工程があります。
特徴的なのは、単に時計を「組み立てている」メーカーではないことです。
ケースやブレスレット、文字盤、ムーブメントといった主要部分だけでなく、18Kゴールドの合金製造など、素材に近い段階から自社で手掛けています。
この記事では、ロレックス公式情報をもとに「ロレックス1本ができるまで」を順番に解説します。
ロレックスはどこで作られている?
ロレックスの時計製造は、主にスイス国内の複数拠点で行われています。
代表的なのが次の4拠点です。
アカシア
ジュネーブにあるロレックスの世界本部です。
経営、研究開発、デザイン、コミュニケーションなどの機能が集まり、時計の最終組立や完成品の品質管理にも関わる重要な拠点です。
新しいロレックスの企画や設計から、完成時計になる最終段階までを担う、いわばロレックスの中枢です。
プラン・レ・ワット
ケースとブレスレットの開発・製造を担う拠点です。
さらに特徴的なのが、自社鋳造所を持っていること。
ロレックスが使用する18Kイエローゴールド、ホワイトゴールド、エバーローズゴールドなどの合金もここで製造されています。
シェーン・ブール
文字盤やベゼルなど、時計の外観を大きく左右する部品を製造する拠点です。
文字盤の製造だけでなく、セラクロムベゼルやベゼルインサート、宝石のセッティングなどにも関わります。
ビエンヌ
ムーブメントの開発・製造を担う拠点です。
地板、ブリッジ、歯車、脱進機など、機械式時計の心臓部となる数多くの部品がここで製造されます。
つまり、ロレックスの製造は一つの巨大工場ですべてを作るのではなく、それぞれ専門性を持った拠点で製造し、最終的に一つの時計へと仕上げていく仕組みになっています。
① 設計・研究開発と素材づくり
ロレックスの製造工程は、当然ながら完成した時計の組立から始まるわけではありません。
最初にあるのが設計と研究開発です。
新しいモデルのコンセプトを決め、ケース、文字盤、ムーブメント、ブレスレットなどを設計し、試作と検証を繰り返します。
時計として美しいだけではなく、耐久性、精度、防水性、装着感など、実用品として求められる性能も考慮しなければなりません。
そして、ロレックスの製造工程を語るうえで外せないのが「素材」です。
ゴールドの合金まで自社製造
ロレックスは自社鋳造所を持ち、18Kゴールドの合金を製造しています。
代表的なのが、
・18Kイエローゴールド
・18Kホワイトゴールド
・18Kエバーローズゴールド
です。
特にエバーローズゴールドはロレックス独自の18Kピンクゴールド合金として知られています。
さらにステンレススチールには、オイスタースチールと呼ばれる904L系のスチールを使用。
プラチナ950なども含め、モデルに合わせて素材が使い分けられています。
高級時計というと研磨や組立といった職人技に目が向きがちですが、ロレックスの場合はその前段階である「何から時計を作るのか」という素材の領域から品質管理が始まっています。
【図解1:設計・研究開発・素材づくり】
② ケースとブレスレットの製造
素材が準備されたら、時計を構成する部品へ加工されていきます。
代表的なのがオイスターケースです。
ロレックスによると、オイスターケースはモデルによって10〜20個の部品から構成され、その製造には150〜300もの工程が必要とされています。
単純に金属を時計型に削れば完成するわけではありません。
素材を加工し、ミドルケース、ベゼル、裏蓋、リューズなど、それぞれの部品を高い精度で仕上げていきます。
機械加工と人間の技術を組み合わせる
ロレックスの時計製造は、すべてを職人が手作業で作っているわけでも、逆にすべてを機械で自動生産しているわけでもありません。
高精度な工作機械を利用する工程と、人の手による研磨、仕上げ、組立、検査を組み合わせています。
精密加工によって寸法精度を確保しながら、最終的な外観や質感を人間の技術によって仕上げていくわけです。
ブレスレットも非常に多くの部品から構成
ブレスレットもロレックスの重要な構成部品です。
オイスターブレスレットやジュビリーブレスレットなど、モデルごとに異なる構造を採用しています。
ブレスレットはモデルによって最大約190個もの部品から構成されます。
一つひとつのリンクを成形・加工し、研磨やサテン仕上げを施したうえで組み立てます。
ロレックスを実際に腕につけたときの質感や剛性感は、ケースだけではなく、このブレスレットの精度や仕上げも大きく影響しています。
【図解2:ケース・ブレスレットの製造】
③ 文字盤・ベゼル・ムーブメントを製造
ケースとブレスレット以外にも、ロレックスでは時計の印象と性能を決定づける重要な部品が製造されています。
文字盤だけでも約60工程
文字盤は一見すると一枚の薄いパーツですが、その製造工程は非常に複雑です。
ロレックスによると、文字盤は約60工程を経て完成します。
モデルによって、
・ラッカー
・PVD
・電気めっき
・サンレイ仕上げ
・マザーオブパール
・メテオライト
・天然石
・ダイヤモンドセッティング
など、さまざまな技術や素材が用いられます。
現在のロレックスでは文字盤のバリエーションが非常に多く、同じモデルでも文字盤によって印象が大きく変わります。
近年人気のオンブレ文字盤なども含め、文字盤製造は単なる部品製造というより、時計のデザインそのものを作る工程といえるでしょう。
セラクロムベゼル
スポーツモデルで重要なのがセラクロムベゼルです。
デイトナ、GMTマスターII、サブマリーナーなど、多くの人気モデルでセラミック製のベゼルまたはベゼルインサートが採用されています。
ロレックス独自のセラミック素材は硬質で傷がつきにくく、紫外線による色の変化にも強いことが特徴です。
さらに数字や目盛り部分には、モデルに応じてプラチナやゴールドなどを用いた処理が施されます。
見た目の美しさだけでなく、長期間使用することを前提とした素材選択になっています。
ムーブメントは約200〜400個の部品
時計の心臓部となるのがムーブメントです。
ロレックスの機械式ムーブメントはキャリバーによって異なりますが、およそ200〜400個の部品から構成されます。
地板、ブリッジ、歯車、脱進機、テンプ、ヒゲゼンマイなど、小さな部品を高精度に製造。
それらを組み合わせることで、一つの機械式ムーブメントが完成します。
さらにロレックスは、ParachromヒゲゼンマイやSyloxiシリコンヒゲゼンマイなど、ムーブメントを構成する重要技術も開発しています。
完成したムーブメントは、スイス公認クロノメーター検査協会「COSC」によるクロノメーター認定試験も受けます。
【図解3:文字盤・ベゼル・ムーブメントの製造】
④ 最終組立
各拠点で作られた部品は、最終的に一つの時計へと組み上げられていきます。
ムーブメントを組み立て、文字盤と針を取り付け、ケースへ収めます。
さらにブレスレットを装着。
ここまで来て、ようやく私たちが普段目にしている「ロレックス」の姿になります。
ただし、形になったからといって完成ではありません。
むしろ、ここからロレックスにとって重要な最終検査が待っています。
⑤ 完成時計でSuperlative Chronometer検査
ロレックスの品質管理で重要なのが「Superlative Chronometer(高精度クロノメーター)」認定です。
COSCによるムーブメント単体のクロノメーター認定に加え、ロレックスではケースに収められた完成時計の状態で独自の検査を実施します。
確認される代表的な項目は、
・精度
・防水性能
・自動巻性能
・パワーリザーブ
などです。
精度は平均日差−2〜+2秒
現在のSuperlative Chronometerでは、ケーシング後の完成時計に平均日差−2〜+2秒という高い精度基準が設定されています。
重要なのは、ムーブメント単体の精度だけではないということです。
実際にケースへ収め、完成した時計として基準を満たしているかを確認します。
モデルごとに必要な防水性能についても検査されます。
サブマリーナーなら300m、シードゥエラーなら1,220m、ディープシーなら3,900mというように、モデルによって求められる性能は異なります。
単に「水深100m以上」と一括りにできるものではなく、それぞれのモデルが設定された防水性能を満たすことが重要です。
⑥ 厳しい検査をクリアして出荷
すべての製造工程と検査をクリアすると、ようやく出荷段階へ進みます。
つまり正規店のショーケースに並ぶロレックスは、
設計
↓
素材製造
↓
ケース・ブレスレット製造
↓
文字盤・ベゼル製造
↓
ムーブメント製造
↓
組立
↓
完成時計の検査
↓
出荷
という長い工程を通過した完成品ということになります。
【図解4:最終組立・検査・出荷】
ロレックスは「大量生産」と「職人技」を両立している
ロレックスの製造工程を調べると、「手作りの高級時計」というイメージだけでは説明できないメーカーであることが分かります。
ロレックスは世界的に非常に多くの時計を供給しています。
その規模で一定の品質を維持するためには、職人の技術だけに頼ることはできません。
一方で、完全な機械生産だけでも高級時計として求められる仕上げや品質を実現するのは難しい。
そこで、
高精度な機械加工
+
自動化された生産・管理システム
+
熟練した人間による組立・仕上げ・検査
を組み合わせています。
「機械か手作業か」という二択ではなく、それぞれが得意な工程を組み合わせていることがロレックスの製造体制の特徴です。
なぜロレックスは高いのか?製造工程から見えてくること
ロレックスの価格については、ブランド価値や市場人気、需給などさまざまな観点があります。
しかし製造工程だけを見ても、一般的な腕時計とは大きく異なる部分があります。
自社で研究開発を行い、ゴールドの合金を製造し、ケースやブレスレットを加工し、文字盤やムーブメントを製造。
さらに完成時計の状態でも厳しい検査を行います。
もちろん、これだけでロレックスの販売価格や中古相場のすべてを説明できるわけではありません。
特に中古市場や並行市場では、製造コストとは別に「需要と供給」が価格を大きく左右します。
デイトナやGMTマスターIIなどが定価を大きく上回る価格で取引されるのは、製造工程が複雑だからというだけではなく、需要に対して正規店での供給が限られていることが大きく影響しています。
つまり、
「時計そのものの品質を生み出す製造工程」と「市場価格を形成する需給」
は分けて考える必要があります。
これはロレックスの資産性やリセールバリューを考えるうえでも重要なポイントです。
まとめ|1本のロレックスには完成品から見えない工程がある
今回は「ロレックス1本ができるまで」を紹介しました。
完成した時計だけを見ると、ケース、文字盤、ムーブメント、ブレスレットというシンプルな構成に見えます。
しかし実際には、素材の研究・製造から始まり、精密加工、研磨、文字盤製造、ムーブメント製造、組立、そして完成時計での検査まで、非常に多くの工程を経ています。
特に印象的なのは、
・オイスターケースは10〜20個ほどの部品から構成
・ケース製造は150〜300工程
・文字盤は約60工程
・ブレスレットは最大約190部品
・ムーブメントは約200〜400部品
・完成後にも独自の厳格な性能検査
という点です。
普段は買取相場やリセールバリュー、入手難易度に注目しがちなロレックスですが、製造工程を知ってから実物を見ると、また違った面白さがあります。
ロレックスは単にブランド力の高い時計ではなく、素材、製造技術、機械加工、職人技、品質管理を組み合わせて作られている工業製品でもあります。
「なぜロレックスはこれほど世界中で支持されるのか」を考えるうえで、その製造工程は一度知っておいて損のないテーマだと思います。



















