ロレックス新作デイトナ Ref.126502を徹底解説|
ロレックスから、非常に興味深いコスモグラフ デイトナが登場しました。
コスモグラフ デイトナ Ref.126502。
一見すると、ホワイト文字盤にグレー系ベゼルを組み合わせたステンレスモデルのようにも見えます。
しかし、その中身を詳しく見ていくと、通常のステンレス製デイトナ Ref.126500LNとはまったく異なるモデルです。
最大の特徴は、
- グラン・フー エナメルダイヤル
- 新開発のアンスラサイトグレー・セラクロムベゼル
- オイスタースチール+プラチナの「ロレジウム」
- シースルーケースバック
という4つ。
さらに、単なる新素材の採用にとどまらず、歴代デイトナを思わせるデザインも随所に取り入れられています。
個人的には、今回のRef.126502で重要なのは「新しいデイトナが追加された」ということだけではないと思っています。
今後のロレックスがどの方向へ進もうとしているのか。
そのヒントが詰まった1本ではないでしょうか。
新作デイトナ Ref.126502とは?
Ref.126502のケース径は40mm。
ムーブメントには現行デイトナと同じく、自動巻きクロノグラフムーブメントのCal.4131を搭載します。
ケースとオイスターブレスレットにはオイスタースチールが使用されているため、基本的な構成だけを見ると現行ステンレスデイトナに近く感じます。
ところが、細部を見ると別物です。
まず注目したいのが素材。
Ref.126502は完全なステンレスモデルではありません。
ベゼル周囲とケースバック外周のリング部分にはプラチナが使用され、ロレックスが「ロレジウム」と呼ぶスティールとプラチナの組み合わせになっています。
ロレジウムといえば、ヨットマスターを思い浮かべる人も多いでしょう。
ただし今回のデイトナでは、プラチナを前面に押し出すのではなく、あくまでスティール主体の外観を維持しながらポイントとして使用しています。
そのため、第一印象は非常にシンプル。
しかし中身を知るほど、かなり特殊なデイトナであることが分かります。
最大の特徴はグラン・フー エナメルダイヤル
Ref.126502最大の見どころは、ホワイトのグラン・フー エナメルダイヤルでしょう。
グラン・フーとは、エナメルを高温で繰り返し焼成して仕上げる伝統的な技法です。
約800℃という高温で焼成を繰り返すため、製造難易度が非常に高く、焼成途中にひび割れや気泡、変形などが発生する可能性もあります。
しかし、完成したエナメルには独特の深みがあります。
一般的な塗装とは異なる、白く滑らかでクリーミーな光沢。
さらに紫外線や酸化などによる経年変化にも比較的強く、長期間その美しさを維持できるのも特徴です。
そしてRef.126502では、単純に1枚のエナメルダイヤルを製作しているわけではありません。
4つのエナメルパーツを個別に製作する特殊な構造が採用されています。
メインダイヤルと3つのインダイヤルをそれぞれ製作し、最終的にひとつのダイヤルとして組み上げます。
しかもエナメルは金属板ではなく、セラミックプレート上に焼成。
ロレックスとしても非常に珍しい試みです。
一見するとシンプルなホワイト文字盤ですが、その製造工程には相当な手間が掛かっていることが分かります。
「アルビノ・デイトナ」を思わせるデザイン
今回のホワイトダイヤルを見て、ヴィンテージロレックスに詳しい人なら「アルビノ・デイトナ」を連想するかもしれません。
通常のデイトナでは、インダイヤルやその外周にコントラストカラーを配置するデザインが多く採用されています。
一方、希少なヴィンテージモデルとして知られるアルビノ・デイトナは、文字盤からインダイヤルまでホワイトを基調とした非常にシンプルなデザインです。
Ref.6263やRef.6265のごく一部で確認されており、ヴィンテージ市場では極めて希少な存在として知られています。
さらに1988年前後の初期ゼニス・デイトナ Ref.16520には、コレクターから通称「ポーセリンダイヤル」と呼ばれる個体も存在します。
こちらは実際には磁器やエナメルではなく特殊なラッカー仕上げですが、独特の乳白色の艶を持っています。
今回のRef.126502は、
アルビノ・デイトナのホワイト基調
そして、
初期ゼニス・デイトナの艶やかな文字盤
を現代の技術で再解釈したようにも見えます。
もちろん完全な復刻ではありません。
むしろ、歴代デイトナの要素を現代的な製造技術で再構築した「ネオヴィンテージ」と考えた方が近いでしょう。
ベゼルも完全新開発
文字盤に注目が集まりやすいRef.126502ですが、個人的にはベゼルもかなり重要だと思います。
採用されたのはアンスラサイトグレーのセラクロムベゼル。
ブラックではなく、金属のようにも見える独特のグレーです。
さらに重要なのが素材。
従来のセラクロムベゼルとは異なり、タングステンカーバイドとジルコニアを組み合わせた新しい複合素材が採用されています。
これによってセラミックの耐久性を維持しながら、金属のような質感を表現しています。
タキメータースケールの数字や目盛りにはPVDによるプラチナコーティングを採用。
その結果、通常のブラックセラクロムとはかなり異なる表情になっています。
単なる「グレーに色を変えたベゼル」ではありません。
素材そのものから作り直している。
ここが非常に重要です。
タキメーターのデザインもヴィンテージ回帰
さらに細かく見ると、タキメータースケールのデザインにも変化があります。
近年のデイトナでは、ベゼル下側にある数字が反転するレイアウトが使われています。
一方、Ref.126502では数字が全周で同じ方向を向くような、歴代デイトナを意識したレイアウトが採用されています。
初代デイトナに近い雰囲気を持つデザインです。
文字盤だけでなく、
ベゼル素材
カラー
書体
数字の配置
まで歴史を意識している。
そのため、Ref.126502は最新技術を投入したモデルでありながら、全体の印象はどこかヴィンテージに感じます。
この「最新技術×歴史」という組み合わせが、今回の新作の面白さでしょう。
デイトナでは珍しいシースルーケースバック
Ref.126502では、シースルーケースバックも採用されています。
これによってCal.4131を裏側から鑑賞できます。
現行デイトナにシースルーバックが採用されるケースは非常に限られています。
フルプラチナ仕様やル・マンなど、特別なモデルを中心に採用されてきました。
そのため、Ref.126502にも同じ仕様を与えたこと自体が、このモデルの特殊な位置づけを示しているように感じます。
ケースバックからはCal.4131のイエローゴールド製ローターなどを確認できます。
また、ブリッジにはロレックス独自の「ロレックス・コート・ド・ジュネーブ」と呼ばれる装飾が施されています。
ロレックスは実用性や堅牢性を重視するブランドというイメージが強いですが、近年はムーブメントを「見せる」ことにも力を入れ始めているように感じます。
ロレジウム仕様は絶妙なバランス
Ref.126502のもうひとつのポイントがロレジウムです。
ケースやブレスレットの大部分はオイスタースチール。
一方、ベゼル周囲やケースバック外周にはプラチナが使われています。
つまり、
見た目や装着感はステンレスデイトナに近いまま、プラチナによる特別感を加えた仕様
と言えます。
もしこれをフルプラチナやフルゴールドで作っていれば、重量も価格もさらに大きくなっていたでしょう。
スティールのスポーツウォッチらしさを残しながら、高級素材と高度な技術を投入する。
Ref.126502のキャラクターを決定づけている部分だと思います。
価格は約920万円
ここまで特殊なデイトナですが、価格もかなり特殊です。
記事で紹介されている価格は、
5万7800ドル、日本円換算で約920万円。
一般的な無垢ゴールド製デイトナを上回る価格帯です。
ほぼスティールに見える時計に約900万円。
外観だけを見れば「高すぎる」と感じる人がいても不思議ではありません。
一方で、価格を単純に使用されている貴金属の量だけで判断するのも難しいモデルです。
4パーツ構成のグラン・フー エナメルダイヤル。
新しいタングステン/ジルコニア複合素材のベゼル。
プラチナのPVD加工。
シースルーケースバック。
そしてロレジウム構造。
素材そのものよりも、研究開発や製造工程に価値を置いた価格設定と考えた方が理解しやすいかもしれません。
さらに「カタログ外モデル」
そして入手難易度を考えるうえで無視できないのが、カタログ外モデルという位置づけです。
通常のステンレス製デイトナでさえ、正規店での購入難易度は非常に高いモデルです。
それ以上に供給機会が限られるのであれば、実際に正規店で目にできる人はかなり限定される可能性があります。
価格だけでなく供給量も含めて、通常のデイトナとは別枠の存在として考える必要がありそうです。
Ref.126502の「5つの魅力」
ここまでの内容を整理すると、このモデルの魅力は大きく5つあります。
1. グラン・フー エナメルダイヤル
4パーツ構成という非常に特殊な製造方法。ホワイトの深い艶と質感は通常の文字盤とは明確に異なります。
2. 新開発のグレーベゼル
タングステンカーバイドとジルコニアを組み合わせた新素材。金属的な質感と高い耐久性を狙った新世代のセラクロムです。
3. シースルーケースバック
Cal.4131を鑑賞できる特別仕様。通常のデイトナとは明確に差別化されています。
4. ロレジウムという素材構成
スティールの実用性を維持しながらプラチナを組み合わせ、特別感を加えています。
5. 歴代デイトナへのオマージュ
アルビノ、初期ゼニス、初代デイトナなどを思わせる要素を、現代の技術で再構築しています。
一方で気になるポイントもある
もちろん、すべてが万人向けというわけではありません。
最大のハードルはやはり価格でしょう。
約920万円という価格は、ほぼスティールに見える時計としてはかなり高額です。
また、実際に使用されているプラチナは限定的。
シースルーケースバックについても、「ロレックスはクローズドバックだからこそいい」と考える人には好みが分かれるでしょう。
さらにカタログ外モデルであれば、購入したくても正規店で遭遇できる可能性そのものが極めて低くなることも考えられます。
そして、このモデルには分かりやすい比較対象がありません。
スティールデイトナとも違う。
ゴールドデイトナとも違う。
プラチナデイトナとも違う。
Ref.126502は、従来の素材によるヒエラルキーだけでは説明しにくいデイトナになっています。
注目したいのは「この時計の次」
そして私がRef.126502で最も注目しているのは、この時計単体の人気や相場だけではありません。
ここで投入された技術が、今後どこまで他モデルへ広がるのか。
こちらの方が重要かもしれません。
たとえば、グラン・フー エナメルが今後ほかのスポーツモデルにも採用される可能性。
タングステンとジルコニアを組み合わせた新しいベゼル素材が、GMTマスターⅡやサブマリーナーなどへ応用される可能性。
そして過去の名作を直接的に意識した「ネオヴィンテージ」のデザインが増えていく可能性。
さらにシースルーケースバックを備えた特別仕様が拡大する可能性もあります。
もちろん、現時点でこれらが実現すると決まったわけではありません。
ただ、ロレックスがここまで新しい技術をひとつのデイトナへ投入した以上、Ref.126502だけで終わるのかは非常に興味深いところです。
まとめ|Ref.126502はロレックスの未来を占う1本?
新作コスモグラフ デイトナ Ref.126502。
一見すると、ホワイト文字盤とグレーベゼルを備えたシンプルなデイトナです。
しかし実際には、
グラン・フー エナメル。
新開発の複合素材ベゼル。
プラチナを組み合わせたロレジウム。
シースルーケースバック。
そして歴代デイトナへのオマージュ。
ロレックスの伝統と最新技術が凝縮されています。
約920万円という価格については意見が分かれるでしょう。
ただし、このモデルの価値を使用されているプラチナの量だけで判断すると、本質を見誤るかもしれません。
むしろ注目したいのは、
「ロレックスがここまで手間の掛かる新技術を、なぜ今デイトナへ投入したのか」
という点です。
Ref.126502は単なる特別仕様のデイトナではなく、これからのロレックスを示す実験的な1本なのかもしれません。
エナメル文字盤、新素材ベゼル、ネオヴィンテージデザイン。
これらが今後ほかのコレクションへ波及するのであれば、Ref.126502は後から振り返ったとき、ロレックスのひとつの転換点として評価される可能性があります。
個人的にも、今回の新作は「欲しいかどうか」だけではなく、この技術が次にどのモデルへ使われるのかまで追いかけたい1本です。



















