2022年「ロレックスバブル」とは?異常な高騰から相場急落までを振り返る

ロレックスの相場を長く見ている人にとって、忘れられないのが2022年前半の「ロレックスバブル」です。
コロナ禍をきっかけに上昇を続けたロレックス相場は2021年にさらに加速し、2022年初頭には異常ともいえる水準まで高騰しました。
特に象徴的だったのが、ステンレスのコスモグラフ デイトナ。
当時の国内定価が約160万円だったデイトナ白文字盤 Ref.116500LNは、2022年3月頃には並行価格が約710万円に達していました。
ところが、その後は状況が一変。
急激に膨らんだプレミアムは縮小し、ロレックス相場は調整局面へ入ります。
今回は当時の資料を振り返りながら、
「なぜロレックスはあそこまで高騰したのか?」
「なぜ2022年に急落したのか?」
「すべてのモデルが同じように下落したのか?」
という3つのポイントを中心に、2022年のロレックスバブルを振り返ります。
2020年から始まったロレックス相場の大幅上昇
ロレックスバブルを考えるうえで重要なのが、2020年以降の社会環境です。
新型コロナウイルスの感染拡大によって旅行、外食、レジャーなどへの支出が減少。
一方で、行き場を失った資金の一部が株式や不動産、高級時計などへ向かいました。
ロレックスは以前から人気が高く、特にデイトナやGMTマスターII、サブマリーナーなどのプロフェッショナルモデルは正規店で簡単に購入できる時計ではありませんでした。
そこへ新たな需要が加わったことで、正規店と並行市場の価格差がさらに拡大していきます。
2021年には「ロレックスバブル」が本格化
2021年に入ると、その動きはさらに加速します。
世界的な低金利や金融緩和によって市場に大量の資金が供給され、株式や暗号資産などさまざまな資産価格が上昇しました。
高級時計市場にも資金が流入し、
「ロレックスは値上がりする」
「買っておけば資産になる」
という認識が急速に広がっていきます。
さらに、コロナ禍による生産や物流への影響もあり、需要に対して供給が追いつかない状況が続きました。
需要増加、供給不足、投資需要。
複数の要因が重なったことで、人気モデルの並行価格は定価の2倍、3倍という水準まで上昇していきました。
2022年初頭、ロレックス相場は過去最高水準へ
そして2022年初頭、ロレックス相場はピークを迎えます。
象徴的だったのが、コスモグラフ デイトナ Ref.116500LNの白文字盤です。
当時の国内定価は約160万円。
それに対して2022年3月頃の並行価格は、一時約710万円まで上昇していました。
単純計算では定価の4倍を超えます。
現在のロレックスも多くの人気モデルでプレミア価格が形成されていますが、当時は「販売価格そのもの」だけでなく「定価に対してどれだけ高いのか」というプレミアム率が非常に大きかったのが特徴です。
デイトナ白は約710万円
当時の価格推移を見ると、デイトナ白 Ref.116500LNは、
2022年2月頃:約635万円
↓
2022年3月初旬:約650万円
↓
2022年3月頃:約710万円
と短期間で急上昇しました。
ところがピークをつけた後は流れが変わり、約650万円まで下落。
わずかな期間で数十万円単位の値動きが発生する、非常に不安定な市場になっていました。
これは通常の時計需要だけでは説明しにくく、投資・投機的な資金が相当程度流入していたことを感じさせる値動きです。
金無垢やプラチナのデイトナも異常なプレミアムに
高騰していたのはステンレスモデルだけではありません。
当時の資料を見ると、イエローゴールドのデイトナ Ref.116508は国内定価約417万円。
プラチナのデイトナ Ref.116506は国内定価約841万円でした。
しかし市場では、金無垢デイトナが1,000万円を大幅に超える水準まで上昇し、プラチナデイトナも定価を大きく上回っていました。
現在では金無垢モデルの場合、ステンレスほど強いプレミアムが付かないモデルも少なくありません。
そう考えると、当時は「ステンレスの人気モデルだけが高かった」のではなく、ロレックス市場全体に大量の資金が流れ込んでいた特殊な時期だったことが分かります。
なぜ2022年春からロレックス相場は急落したのか?

上昇を続けていたロレックス相場ですが、2022年3月頃を境に流れが変わります。
ひとつの原因だけで暴落したというより、複数の環境変化が同時期に重なったと考える方が自然でしょう。
1.コロナ特需の縮小
まず大きかったのが、コロナ禍特有の消費行動の変化です。
社会活動が徐々に正常化すると、それまで高級時計などに向かっていた資金が旅行や外食などへ再び分散するようになります。
コロナ禍によって生まれた特殊な需要環境が薄れていったわけです。
2.金融環境の変化
ロレックスバブルを押し上げた要因のひとつが、世界的な金融緩和でした。
しかしインフレが大きな問題になるにつれて金融政策も転換。
金利上昇への警戒が強くなり、株式や暗号資産を含むリスク資産の市場環境も変化していきます。
「価格が上がるから買う」という投機的な需要が強かった市場ほど、その影響を受けやすくなります。
3.ロシアによるウクライナ侵攻
2022年2月にはロシアによるウクライナ侵攻が始まりました。
世界経済の先行きに対する不透明感が一気に高まり、高級時計市場にも影響します。
それまで強気一辺倒だった市場心理が変化したタイミングのひとつでした。
4.為替と世界的な流通の変化
日本のロレックス相場を考えるうえでは、為替も無視できません。
ロレックスは世界中で売買される商品であり、日本国内だけで相場が決まっているわけではありません。
円安になれば単純に国内相場が上昇するように見えますが、海外との価格差によって輸出入や業者間取引にも変化が生じます。
そのため、為替の影響は非常に複雑です。
すべてのロレックスが同じように暴落したわけではない

2022年の相場を見るうえで、ここは非常に重要です。
「ロレックス相場が暴落した」
と一括りにされることがありますが、実際にはモデルによって値動きがかなり違いました。
GMTマスターII ペプシは比較的底堅かった
GMTマスターII ペプシ Ref.126710BLROは、
2022年2月:約373万円
2月中旬:約380万円
3月:約390万円
3月中旬:約396万円
4月:約380万円
5月:約380万円
という推移でした。
ピークアウト後も大きく崩れず、高値圏を維持しています。
サブマリーナー ノンデイトはさらに安定
さらに興味深いのが、サブマリーナー ノンデイト Ref.124060です。
2022年2月:約206万円
2月中旬:約200万円
3月:約200万円
3月中旬:約200万円
4月:約200万円
4月中旬:約210万円
5月:約210万円
大きな暴落は確認できません。
むしろ下落の影響が非常に小さく、その後の回復も早かったことが分かります。
2022年の暴落で分かった「実需」の重要性
デイトナ、GMTマスターII、サブマリーナー。
いずれも人気モデルですが、2022年の調整局面では値動きに違いがありました。
ここから見えてくるのが「実需」の強さです。
投資・投機的な需要によって本来の需給以上に価格が上昇したモデルは、市場心理が変化すると下落幅も大きくなります。
一方、実際に「その時計が欲しい」という購入需要が厚いモデルは、価格が下がると新たな買いが入りやすくなります。
サブマリーナーが比較的安定していたことは、その典型例と言えるでしょう。
2022年の下落は「ロレックス人気の終了」だったのか?
私はそうではなかったと考えています。
2022年に崩れたのはロレックスそのものの人気というより、
「異常に膨らんでいたプレミアム」
だったのではないでしょうか。
定価約160万円のデイトナが700万円を超える。
金無垢モデルも定価の数倍になる。
そのような状態が永遠に続くと考える方が難しいでしょう。
相場が下落すると「ロレックスバブル崩壊」という言葉が目立ちましたが、その後もロレックスの人気モデルは定価を大きく上回る価格で取引されています。
つまり、バブルが崩壊した後も需要そのものは残ったわけです。
2022年のロレックスバブルから現在の相場を考える

2022年の相場は、現在のロレックス市場を見るうえでも非常に参考になります。
重要なのは「価格が上がっているか、下がっているか」だけを見ることではありません。
その価格を支えているのが、
実際に時計を欲しい人なのか。
投資目的の資金なのか。
為替なのか。
供給不足なのか。
あるいは複数の要因が重なっているのか。
ここを見る必要があります。
また、同じロレックスでもモデルによって需要の厚さはまったく違います。
2022年の調整局面でモデルごとの下落幅に差が出たことは、それを非常に分かりやすく示した事例でした。
まとめ|2022年は「ロレックス人気」ではなく「過剰なプレミアム」が崩れた
2020年から始まったロレックス相場の上昇。
2021年には金融緩和や投資需要、供給不足などが重なり、いわゆる「ロレックスバブル」が本格化しました。
そして2022年初頭には、デイトナ白 Ref.116500LNが約710万円まで上昇するなど、多くの人気モデルが過去最高水準に到達します。
しかし、その後はコロナ特需の縮小、金融環境の変化、地政学リスクなど複数の要因が重なり、相場は調整局面へ。
ただし、その下落幅はモデルによって大きく異なりました。
ここから分かるのは、
「ロレックスだから上がる」
「相場全体が下がれば全部同じように下がる」
というほど単純ではないということです。
2022年のロレックスバブルを今振り返ると、崩れたのはロレックスの人気そのものではなく、短期間で異常に膨らんだプレミアムだったように思います。
今後の相場を考える際にも、価格だけではなく、その価格を支えている「需要の中身」を見ることが重要だと考えています。



















