ロレックスが立ち会った人類の歴史的挑戦
現在では世界を代表する高級腕時計ブランドとなったロレックス。
しかし、その歴史をたどっていくと、単に「高級な時計」を作ってきたブランドではないことが分かります。
イギリス海峡、エベレスト、世界最速への挑戦、宇宙、そして水深約11kmのマリアナ海溝。
ロレックスは、人間が未知の領域へ挑戦する現場に時計を送り込み、その性能を実際の環境で試してきました。
ロレックス自身も、こうした現実世界を時計を試す「Living Laboratory(生きた実験室)」として位置づけています。
今回は、そんなロレックスが立ち会ってきた歴史的な挑戦を時系列で紹介します。
1927年|イギリス海峡でオイスターの防水性能を証明
ロレックスの「挑戦の歴史」を語るうえで欠かせないのが、メルセデス・グライツです。
1927年10月、イギリス人スイマーのグライツがイギリス海峡への挑戦に臨んだ際、ロレックス創業者ハンス・ウイルスドルフはオイスターを装備させました。
時計は10時間以上にわたり非常に冷たい海水にさらされながらも正常に機能。
前年の1926年に発表されたオイスターの防水性能を、実際の過酷な環境で示す象徴的な出来事となりました。
この出来事は、その後のロレックスにもつながる重要な考え方を生み出します。
それが、
「時計の性能は、実際の環境で証明する」
という発想です。
1933年|世界初のエベレスト上空飛行
舞台は海から空へ移ります。
1933年、世界で初めてエベレスト上空を飛行したヒューストン遠征隊には、ロレックス オイスターが装備されていました。
4月19日の飛行では航空機が高度約9,000mに達し、ヒマラヤ上空を飛行。
極寒や高高度という当時としては極めて過酷な航空環境のなかで、オイスターが使用されました。
興味深いのは、この飛行で撮影された写真が後のエベレスト遠征にもつながっていることです。
ロレックス公式によれば、この日に撮影された写真は後に、1953年にエベレスト初登頂を成功させるジョン・ハント遠征隊にも利用されました。
1935年|時速300マイルの壁を突破
次の舞台はモータースポーツです。
1935年、サー・マルコム・キャンベルはアメリカ・ユタ州のボンネビル・ソルトフラッツで「ブルーバード」を走らせ、人類で初めて時速300マイル(約483km/h)の壁を突破しました。
その腕にはロレックス オイスターがありました。
キャンベルは1930年頃からオイスターを使用しており、ロレックスは高速走行による振動や衝撃に対する時計の性能を実地で確認していきます。
ロレックス公式によれば、キャンベルは1924~1935年の間に世界地上速度記録を9回更新しています。
つまりロレックスが試されていたのは、防水性能だけではありません。
水、寒さ、高度、振動、衝撃。
さまざまな環境が時計を試す「生きた実験室」になっていったのです。
1953年|人類初のエベレスト登頂
1933年に上空を飛んだエベレストへ、今度は人間が自ら登ります。
1953年5月29日。
エドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイが世界で初めてエベレスト山頂へ到達しました。
2人が参加したジョン・ハント率いるイギリス遠征隊には、ロレックスの時計が提供されていました。ロレックスは現在も、1953年の遠征隊がオイスター パーペチュアル クロノメーターを装備していたことを紹介しています。
標高8,848mという極限の環境。
ここでもロレックスは人類の歴史的な挑戦に立ち会いました。
そして、この探検の歴史は後にエクスプローラーへとつながっていきます。
1960年|ロレックスが水深10,916mへ
ここからロレックスの挑戦は、地球上で最も深い場所へ向かいます。
1960年1月23日。
ジャック・ピカールとドン・ウォルシュが搭乗した潜水艇「トリエステ」が、マリアナ海溝のチャレンジャー海淵へ潜航しました。
到達した深度は10,916m。
そして潜水艇の外部には、ロレックスが開発した実験用時計「ディープシー スペシャル」が取り付けられていました。
結果は驚くべきものでした。
地上とは比較にならないほどの水圧を受けたにもかかわらず、ディープシー スペシャルは帰還後も正常に作動していました。
1927年にイギリス海峡の海面で防水性能を証明したオイスター。
それから約33年後には、地球上で最も深い場所にまで到達したことになります。
1970年|ロレックスは宇宙へ
ロレックスの挑戦は地球上だけではありません。
1970年のアポロ13号ミッション。
宇宙飛行士ジャック・スワイガートは、自身が所有するGMTマスターをミッション中に着用していました。
ロレックス公式にも、スワイガートがアポロ13号のミッションを通じて個人所有のGMTマスターを着用していたことが記録されています。
ここは表現に注意したいポイントです。
GMTマスターがアポロ13号の「公式採用時計だった」という話ではありません。
あくまでスワイガート個人のGMTマスターが宇宙へ渡ったというエピソードです。
それでも、海、山、空へと広がってきたロレックスの歴史が宇宙にまで到達した象徴的な出来事といえるでしょう。
1970年代|シルビア・アールと海中探査
海洋探査の歴史で欠かせない人物が、海洋学者シルビア・アールです。
アールは数多くの海洋探査に参加し、1970年には女性だけで構成されたチームによる海中居住実験「Tektite II」に参加したことで知られています。
ただし、ここも正確に分けて考える必要があります。
今回確認したロレックス公式資料では、アールが1982年からロレックスのテスティモニーであることは明記されています。
一方、「1970年のTektite IIそのものにロレックスが関与していた」という点は、今回確認したロレックス公式資料からは明確に裏付けられませんでした。
そのためブログでは、
「後にロレックスと深い関係を築くシルビア・アールが、1970年にTektite IIへ参加した」
という書き方にしておくのが安全です。
2010年|北極の氷の下へ
北極圏については、1974年ではなく、公式に詳細な記録が残っている2010年の「Deepsea Under The Pole」を取り上げるのがおすすめです。
8人の探検隊は北極圏をスキーで移動しながら、海氷の下へ潜水。
目的は、消えつつある極地の海氷を水中から記録し、科学的観察を行うことでした。
極寒の環境ではカメラやケーブルなどさまざまな機材にトラブルが発生しましたが、探検隊が使用した5本のロレックス ディープシーは正常に機能したとロレックスは記録しています。
1927年の冷たいイギリス海峡から80年以上。
ロレックスは再び、極寒の水中で時計を使用していました。
2012年|52年ぶりにマリアナ海溝へ
1960年のトリエステから52年。
ロレックスは再びチャレンジャー海淵へ向かいます。
2012年3月26日、映画監督で探検家のジェームズ・キャメロンが潜水艇「ディープシー チャレンジャー」で単独潜航。
到達深度は10,908mでした。
潜水艇の外部には、実験用に開発された「ロレックス ディープシー チャレンジ」が取り付けられていました。
しかも1本だけではありません。
ロレックスによれば、1本が潜水艇の油圧式マニピュレーターアームに、さらに2本が船体に取り付けられていました。
約7時間の潜航を経ても、時計は正常に機能して帰還しています。
1960年と2012年。
人類がチャレンジャー海淵へ到達した歴史的な2つの潜航に、どちらもロレックスが同行していたことになります。
なぜロレックスは「極限」に時計を送り続けたのか
ここまでの歴史を並べると、ひとつの共通点が見えてきます。
ロレックスは単に有名な冒険家へ時計を提供してきたわけではありません。
極限環境そのものを、
時計を試し、改良するための「生きた実験室」にしてきた
ということです。
1927年には防水性能。
1930年代には高高度や高速走行。
1950年代には高山。
1960年には超深海。
そして現代では科学的な海洋探査へ。
こうして見ると、サブマリーナー、エクスプローラー、GMTマスター、シードゥエラー、ディープシーといった現在のプロフェッショナルモデルが生まれた背景も理解しやすくなります。
ロレックスが立ち会った歴史的挑戦【早見表】
| 年 | 歴史的挑戦 | ロレックスとの関係 |
|---|---|---|
| 1927年 | イギリス海峡への挑戦 | メルセデス・グライツがオイスターを装備 |
| 1933年 | 世界初のエベレスト上空飛行 | 遠征隊がオイスターを装備 |
| 1935年 | 300mph突破 | マルコム・キャンベルがオイスターを着用 |
| 1953年 | エベレスト初登頂 | ジョン・ハント遠征隊に時計を提供 |
| 1960年 | マリアナ海溝10,916m | ディープシー スペシャルをトリエステ外部に装着 |
| 1970年 | アポロ13号 | ジャック・スワイガートが個人所有のGMTマスターを着用 |
| 1970年 | Tektite II | 後のロレックス テスティモニー、シルビア・アールが参加 |
| 2010年 | 北極圏の海氷下探査 | 5本のロレックス ディープシーを使用 |
| 2012年 | マリアナ海溝10,908m | ディープシー チャレンジを潜水艇外部に装着 |
まとめ|ロレックスは人類の挑戦とともに進化した
イギリス海峡から始まり、エベレスト、世界最速への挑戦、宇宙、北極、そして水深約11kmの世界へ。
ロレックスの歴史を振り返ると、その時計は人類が未知の領域へ踏み出す瞬間に何度も立ち会っています。
そして重要なのは、これらが単なるブランドストーリーではなく、時計を実際の過酷な環境へ持ち込み、性能を試す機会にもなっていたことです。
「高級時計だからロレックスなのか?」
歴史をたどっていくと、むしろその逆だったことが見えてきます。
過酷な環境で使える実用時計を追求し続け、その積み重ねが現在のロレックスの信頼性やブランド価値につながっている。
これこそが、ロレックスの歴史を知る面白さではないでしょうか。























































