2025年8月7日、米国がスイス製品に対して39%という高関税を正式に発動しました。
この歴史的な関税措置は、高級時計市場に大きな衝撃を与えており、とりわけロレックス相場への影響が注目されています。
本記事では、海外報道をもとに今回のニュースを整理し、日本国内の正規店販売価格に与える影響を詳しく解説します。
米国39%関税の背景と経緯
2025年、米国政府は特定国との大幅な貿易赤字是正を目的に**「相互関税制度(Reciprocal Tariff)」**を導入しました。
この制度は、相手国が米国製品に課している関税率や市場開放度に応じて、同等かそれ以上の関税を課すというものです。
スイスはこの対象国に含まれ、当初は31%の追加関税案が検討されていました。
しかし交渉は難航し、最終的に39%という異例の高税率が決定。
8月7日に正式に発動されました。
EUや日本に課される20%前後の関税と比べても、39%は極めて高い水準です。
交渉期限直前にはスイスのカリン・ケラー=スッター大統領が緊急訪米し、マルコ・ルビオ国務長官と会談しましたが、合意には至りませんでした。
高級時計業界への影響
今回の関税は、医薬品や精密機器と並び、スイスを代表する輸出品である高級時計にも直撃します。
ロレックス、オメガ、パテックフィリップ、オーデマピゲなど、ほぼ全てのスイス製時計が対象です。
関税分は米国市場での販売価格に直接反映されるため、消費者価格の大幅上昇は避けられません。
複数の報道によると、関税発動後、多くのブランドで米国内小売価格は平均12〜22%上昇。
老舗のDuBois et filsは人気モデル「DBF008」を約10,800ドルから14,500ドルへ、約34%の値上げに踏み切りました。
ロレックスの価格動向と2025年の改定状況
重要な前提として、2025年の日本国内正規店での定価改定は1月の1回のみです。
年初に素材価格や為替変動を背景に全体的な値上げが行われ、その後は春・夏ともに日本での改定はありません。
一方、米国や一部の海外市場では春にゴールド価格高騰を反映したモデル別値上げ、夏には特定モデルの限定調整が行われています。
今回の39%関税により、米国でのロレックス価格はさらに12〜14%前後の上昇が見込まれます。
特にデイトナやサブマリーナーなどの人気モデルでは、大幅上昇する可能性があります。
並行輸入・中古市場への波及
米国価格の急騰は、日本の並行輸入市場や中古市場にも直結します。
- 仕入れコストの上昇
米国経由の新古品・未使用品の価格が上がるため、並行業者は仕入れを控えるか販売価格に転嫁せざるを得ません。 - 短期的な相場上昇
「今のうちに買いたい」という駆け込み需要が発生し、短期的には相場が押し上げられます。
過去の事例でも、こうした短期高騰の後は需要が一巡し、価格が落ち着く傾向が見られます。
日本正規店の定価改定と例年の9月傾向
ロレックスは各国で定価の足並みを揃える傾向があります。
これは並行輸入による価格差ビジネスを抑え、ブランド価値を守るためです。
例年、日本国内では9月に数%〜10%程度の定価改定が行われます。
主な要因は素材価格や為替の変動、海外市場の価格調整です。
しかし2025年は、通常の改定要因に加えて**「米国との価格差是正」**という新たな要素が加わります。
そのため、例年なら5〜8%程度に収まる改定が、今年は上限寄りの10%、あるいはそれ以上になる可能性もあります。
グローバル価格調整の過去事例
ロレックスは過去にも海外市場の値上げ後、短期間で他国の定価を引き上げた事例があります。
- 2022年:米国で約7%の値上げ → 翌年初頭に日本でも同水準の改定
- 背景:越境購入による在庫流出防止と価格バランスの維持
今回の米国39%関税による急騰は、この調整メカニズムを通じて日本にも波及する可能性が極めて高いといえます。
今後の相場展望(個人的見解)
- 短期:米国価格急騰と駆け込み需要で並行・中古相場が上昇
- 中期:米国内需要減退で供給が他国に回り、日本市場の在庫状況に影響
- 長期:米スイス間の交渉再開による関税引き下げの可能性もあるが、政治的リスクが高い
購入・売却の戦略ポイント
- 売却を検討している方:米国値上げニュースが話題になっている今は高く売れる可能性が高い
- 購入を検討している方:日本の9月改定前に動くことで、値上げ前の価格で入手できる可能性がある
まとめ
米国による39%関税発動は、ロレックス市場にとって歴史的な出来事です。
米国価格の急騰は、日本を含む他国の定価改定を誘発する可能性が高く、その影響は並行・中古市場にも広がります。