はじめに
今回のテーマは「なぜアメリカの関税が日本の定価に影響するのか?」。
一見すると無関係に見えるアメリカ市場の動きが、実は世界のロレックス価格を揺るがすトリガーになっています。
この記事を通じて、今後どのようにロレックスを購入すべきか、どんなモデルを狙うべきかの判断材料にしていただければと思います。
第1章:2025年9月のスイス輸出統計が示す異常な構図
まず注目すべきは、2025年9月に発表されたスイス時計産業連盟(FH)の輸出統計です。
全体では前年同月比マイナス3.1%というわずかな減少でしたが、内訳を見てみると衝撃的な数字が隠れています。
特にアメリカ向けの輸出が、前年比マイナス56%という異常な落ち込み。
これは近年まれに見る急落であり、スイス時計業界全体に大きな波紋を呼んでいます。
一方で、中国・中東・東南アジア・インドといった新興市場は軒並み7〜9%のプラス成長。
つまり、今回の下落は需要減退ではなく、アメリカという単一市場の構造的問題が原因です。
その背景にあるのが、2025年から適用された最大39%の高関税。
スイス製の高級時計やチーズ、医薬品などに課されたこの関税が、アメリカ国内の小売価格を一気に押し上げ、需要を蒸発させました。
この事態を受け、ロレックスを含む主要ブランドは、今まさに難しい決断を迫られています。
第2章:ロレックスが守り抜いてきた“世界同一価格”という哲学
では、なぜアメリカの関税が日本の定価にまで影響を及ぼすのでしょうか。
その答えは、ロレックスが一貫して貫いてきた「世界的価格均衡」の哲学にあります。
ロレックスは、為替や関税などの地域差があっても、各国の定価をほぼ同水準に揃えるというポリシーを徹底しています。
理由は明快です。
もし特定の国で極端に安く買えるとなれば、並行輸入が活発化し、正規販売網の信頼が揺らぎます。
やがてブランドの価格秩序が崩れ、資産性にも悪影響を及ぼす。
ロレックスがこの「価格の均衡」を守り続けてきたのは、どこで買っても損をしないという“定価への信頼を維持するためです。
そして今、そのバランスを崩しかねないのが、アメリカ市場の異常事態です。
第3章:アメリカ関税の“痛み分け”戦略と世界的な価格調整の波
アメリカで39%もの関税が課せられた今、ロレックスが取ると考えられるのは「痛み分け戦略」。
つまり、アメリカ国内での価格上昇を他地域でも部分的に吸収し、世界的に価格差を均等化する動きです。
関税による価格乖離を放置すれば、アメリカ以外の国で“買い付け転売”が急増してしまうからです。
ロレックスにとって最も重要なのは、どの国で買っても価格の整合性が保たれていること。
「どこで買っても損をしない」「定価に信頼がある」この理念こそが、ロレックスの資産性を支える最大の土台といえます。
したがって、アメリカの関税問題は一国の問題ではなく、世界全体で共有される課題。
結果として、アメリカ発の価格上昇が世界的な定価改定の引き金になる可能性が高いです。
第4章:日本市場にも波及する“定価の波”と今が動くべき理由
では、日本市場はどうなるのか。
現時点ではアメリカの関税影響はまだ反映されていませんが、ロレックスが世界同一価格を維持する限り、遅かれ早かれ日本の定価にも影響が及ぶと考えるべきです。
仮にアメリカでの販売価格が50万円上昇すれば、他国では20〜30万円程度の価格調整が行われるこうした形で整合性を取るのが、ロレックスのやり方です。
したがって、今すでに狙っているモデルがあるなら、「今の定価で買えるうちに購入する」という判断が非常に重要です。
特にゴールド素材のモデルなどは、関税だけでなく金相場高騰の影響も直撃しており、値上げ圧力はさらに強まっています。
第5章:2026年に向けた3つのシナリオ
ここから先、考えられる未来は大きく3つです。
1️⃣ 関税維持&世界同時値上げシナリオ
最悪の場合、アメリカの関税を全世界が“痛み分け”で吸収する形となり、ロレックス定価は全面的に上昇。
日本でも高価格帯モデル中心に強烈な値上げが継続する可能性があります。
2️⃣ 関税緩和シナリオ
アメリカとの交渉が進み、関税が軽減された場合、上昇圧力はやや緩むものの、素材価格高騰を理由に値上げ自体は続行。
“中止”ではなく“緩和”にとどまると考えられます。
3️⃣ アジア主導シナリオ
アメリカ市場の比重が下がり、アジア圏への供給が増加。
一時的に日本への割当が増える可能性もありますが、同時に買い圧力が集中し、競争が一段と激化するリスクも。
個人的にはこのシナリオは実現性が低いと見ています。
最終章:結論 ― “今の定価”が最安値である可能性
アメリカの関税は、やがて日本にも波及します。
その時、ロレックスの定価はすでに“ひとつ上のステージ”へ上がっているかもしれません。
だからこそ、今の定価で購入できるこの瞬間こそがチャンス。
未来の値上げ後に後悔しないためにも、今のうちに動く判断が最も合理的だといえます。
