〜9月値上げ見送りの真相と米国関税、スイス政府の緊急交渉、世界同時値上げの可能性〜
はじめに
2025年9月、ロレックスの定価改定が「見送り」となったというニュースは、多くの時計ファンや投資家にとって意外な出来事でした。例年この時期は値上げの可能性が高く、市場でも「大幅改定は避けられない」との見方が優勢だったためです。
一方で、8月に米国がスイス製時計を含む輸入品に 39%という極めて高い関税を導入したことで、市場環境は大きく変わりました。これを受け、スイス政府は米国に対して 10〜15%程度までの関税引き下げを狙った交渉案を準備中で、防衛装備やエネルギー供給、国内市場開放などの譲歩を盛り込む姿勢を示しています。
この国際的な交渉の行方が、今後のロレックス相場に大きく影響することは間違いありません。今回はこの一連の動きを踏まえ、ロレックス相場の未来を長期的な視点から掘り下げて解説していきます。
9月の値上げ見送りは「安心」ではなく「布石」
まず押さえておきたいのは、今回の見送りが「値上げの中止」を意味するのではなく、あくまで「延期」であるという点です。
ロレックスは過去を振り返っても、インフレや素材価格の高騰を無視して定価を据え置き続けたことはありません。特にこの数年はゴールドやプラチナといった貴金属の高騰が著しく、スイス国内でも人件費やエネルギーコストが上昇しています。値上げ圧力はすでに限界に達している状況であり、今回の見送りは「タイミングをずらした戦略的判断」にすぎないのです。
米国関税39%の衝撃
8月に米国が導入した39%の関税は、ロレックスを含むスイス時計業界にとってまさに激震でした。米国はスイスにとって最大級の輸出市場であり、そこに一挙に高関税がかかれば輸入コストは跳ね上がり、販売価格に直結します。
この関税によって米国内での需要は急減速するリスクが高まり、並行市場や中古市場への影響も避けられません。実際に一部ディーラーでは仕入れコスト増を織り込み、販売価格を改定し始めているケースも出ています。
スイス政府の緊急交渉
こうした事態を受け、スイス政府は即座に交渉に動き出しました。報道によると、米国に対し防衛装備の購入、LNG(液化天然ガス)の供給拡大、さらには国内市場開放といった譲歩を含むパッケージを提示する予定です。その見返りとして、関税を現在の39%から10〜15%程度にまで引き下げることを狙っています。
もしこの交渉が実現すれば、ロレックスを含むスイス時計の輸入コストは一定程度抑えられ、当初懸念されたほどの価格高騰には至らない可能性があります。しかし、交渉が難航すれば高関税は長期化し、価格上昇圧力は継続するでしょう。その場合、米国市場の需要はさらに冷え込み、中古市場やロレックスのCPO(認定中古品)への注目が高まることは避けられません。
世界同時値上げの可能性
ロレックスはこれまで、世界各国で価格のバランスを取るために「同時値上げ」を実施してきました。ある国だけが割安になれば、その国で買った商品が他国に流れ、価格差を利用した転売が発生するからです。
今回の米国関税問題は、まさにこの「価格バランス」を崩壊させるリスクを孕んでいます。交渉が不調に終われば、ロレックスは一気に世界同時値上げを実施し、各国で均衡を取る可能性が高いと見られます。逆に交渉が進展しても、インフレや素材高といった要因は消えないため、世界規模での値上げは時間の問題と言えるでしょう。
インフレと素材価格が与える影響
ロレックス相場を考える上で忘れてはならないのが、インフレと素材価格の影響です。金の価格は1グラム1万7,000円を超える水準まで高騰しており、これは10年前と比べてほぼ倍増しています。プラチナも7,000円前後と堅調に推移しており、いずれも高級時計の製造コストを直撃しています。
また、スイス国内では人件費やエネルギーコストが上がり続けています。これらのコストは一度上がると下がりにくいため、価格改定の圧力は今後も持続することになります。
日本市場と円安の現実
日本に住む私たちにとって、さらに大きな影響を与えるのが円安です。日銀が低金利政策を続ける一方で、欧米は高金利を維持しているため、円は相対的に売られやすく、スイスフランやドルは買われやすい状況が続いています。
そのため、たとえ米国市場で関税が下がったとしても、日本では円安による価格上昇が避けられません。結果として「海外では調整があっても、日本では上がり続ける」という構造が出来上がっているのです。
中古市場・CPOの存在感
こうした背景から、新品市場が高騰する一方で、中古市場やロレックス公式のCPO(認定中古品)が注目を集めています。関税や為替の影響を受けにくく、価格が比較的安定しているCPOは、資産価値を重視する層にとって魅力的な選択肢となっています。今後数年間は、新品とCPOの二極化がさらに鮮明になると予想されます。
投資・売却の判断ポイント
直近で売却を検討している方にとっては、9月の値上げ見送りによる一時的な安定感を利用し、早めに行動するのも賢い判断です。相場が大きく動く前に売却することで、不確実性を回避できるからです。
一方、長期保有を考える方にとっては、インフレと円安、そして世界同時値上げの可能性を踏まえ、ロレックスを「資産防衛の手段」として持ち続けることの価値がさらに高まります。数年先を見据えれば、円ベースの相場は今より高くなっている可能性が非常に高いのです。
まとめ
今回の9月の値上げ見送りは「終わり」ではなく「始まり」であり、むしろ将来の大幅値上げに向けた布石であると見るべきです。米国による39%関税と、それに対するスイス政府の緊急交渉は、相場を左右する大きなカギを握っています。交渉が進展すれば価格上昇はある程度抑制されますが、難航すれば世界同時値上げが現実味を帯び、一気に相場が跳ね上がる可能性もあります。
インフレ、素材価格の高騰、円安という構造的な要因は今後も続きます。短期的な揺れに惑わされるのではなく、長期的な資産価値という視点でロレックスを見つめることが、これからの時代に求められる姿勢だと言えるでしょう。