2025年10月、ロレックス相場が再び上昇基調へと転じています。
長く続いた調整局面がようやく底を打ち、じわじわと反発の兆しを見せている。
いま、世界中の時計市場でそんな声が高まっています。
では一体、何が起きているのか。
そしてなぜこのタイミングでロレックス相場が上向き始めているのか。
今回は10月に公開された海外メディアの最新記事をもとに、上昇の背景をお伝えさせていただきます。
第1章:中古時計市場が3年ぶりに反発
まず注目すべきは、スイスの有力時計メディア「HODINKEE(ホディンキー)」が10月13日に報じたニュースです。
記事タイトルは「中古時計市場が3年ぶりに上昇に転じた」。
モルガン・スタンレーとウォッチチャーツが共同でまとめたデータによると、2025年第3四半期の中古時計指数は+1.5%を記録。
そのうち、ロレックスは+1.3%、パテックフィリップは+3.9%と、2大ブランドが上昇をけん引したと報じられています。
これは、2023年から続いていた世界的な調整局面がひとまず底を打ち、需要が戻り始めたことを意味します。
ただし、上昇しているのはすべてのブランドではなく、信頼度の高いトップブランドに限られているのが特徴です。
つまり、「ロレックスやパテックなどの資産性の高いブランドに需要が集中し、他ブランドとの差が拡大している」これが現在の市場構造です。
第2章:ロレックスが示す圧倒的なバリューリテンション
ホディンキーの分析によると、ロレックス全体の「バリューリテンション(定価に対する中古価格の維持率)」は平均+15%超。
これは他ブランドを大きく引き離す数値です。
依然として多くのモデルが「定価以上の中古価格」を維持しており、ロレックスが再び“実物資産”として再評価されていることが浮き彫りになりました。
第3章:関税と素材高騰、ロレックスが直面する“二重のコスト圧力”
次に注目したいのが「WatchPro(ウォッチプロ)」が10月に公開したコラムです。
タイトルは
「トランプ政権下で関税が39%に引き上げられ、金価格も過去最高を更新しているが、なぜロレックスは価格を上げないのか」
この中でロレックスが直面している“二重のコスト圧力”が語られています。
ひとつは金やプラチナなど貴金属価格の高騰。
もうひとつは**アメリカによるスイス製品への高関税(最大39%)**です。
実際、ロレックスは2025年初頭に世界的な最大15%の価格改定を実施し、さらに5月にはアメリカ限定で+3%の追加改定を行いました。
しかし、その後は値上げを見送っています。
第4章:なぜロレックスは値上げを控えているのか
金価格が高騰し、プラチナも上昇しているのに、ロレックスは価格を据え置いている。
この理由について、ウォッチプロは2つの仮説を示しています。
- 一時的なコスト上昇と見ている可能性
- 市場心理を冷やさないための戦略的判断
短期的なコスト上昇よりも、中長期的なブランド信頼を優先している、これがロレックスの経営哲学です。
しかしこの“値上げを控える姿勢”こそが、皮肉にも中古相場を押し上げる要因となっています。
市場が「次の値上げを見越して今のうちに買おう」と動くためです。
第5章:関税ショックによる“駆け込み需要”
ホディンキーの別記事によると、アメリカがスイス製品への高関税を正式発表した直後、ロレックス中心に中古取引量が急増したといいます。
データベース「EveryWatch」によれば、発表直後の週に取引総額が1.2億ドル→1.4億ドルへと急増。
出品数・在庫ともに大幅に増えました。
まさに“情報ショック”型の相場反応です。
ニュースが市場心理を一変させた典型的なケースといえるます。
第6章:複合要因で生まれる「実体を伴う上昇」
ここまでを整理すると、今回の相場上昇は単なる一時的な反発ではありません。
いくつもの現実的な要因が重なり合った結果といえます。
- 関税ショックによる将来の値上げ懸念
- 金価格の高騰による製造コスト上昇
- 正規価格の引き上げと中古市場の乖離
- 供給制限の継続
- インフレ下での“実物資産志向”
これらが複合的に作用し、需給の前倒しと相場の底上げが起きているのです。
第7章:金無垢モデルが示す「実物資産」としての強さ
特に注目したいのが金無垢モデルの存在です。
素材そのものの価格が上昇しているため、時計でありながら“純粋な資産”としての性格を強めています。
こうした動きは、単なる嗜好品としてではなく「資産運用の一部として時計を保有する」人々の増加を意味します。
ロレックスが長年支持され続けてきた理由も、まさにこの「資産としての安定感」にあると言えるでしょう。
第8章:今後のロレックス相場展望 ― 「ゆるやかな上昇トレンド」
今後の展望としては、しばらく上昇基調が続く可能性が高いと見られます。
もちろん短期的な調整はあるでしょう。
しかし構造的な要因(関税・素材高・インフレ)は簡単に解消されません。
次の定価改定は2026年初頭に行われる可能性が高く、それまでの期間は“下支えの強い市場”が続くと予想されます。
今後の相場を一言で表すなら
「ゆるやかな上昇トレンドの中での小さな波」。
勢いで高騰するのではなく、上げと調整を繰り返しながら着実に水準を切り上げていく展開が想定されます。
特に人気モデルのデイデイトや、金無垢・ロレゾール系モデルが引き続き相場を牽引するでしょう。
第9章:バブルではなく“実体をともなった上昇”
今回の上昇は、2021年~22年のようなバブル的な高揚ではありません。
為替、素材、税制、そして実需という複数の現実的な要素が重なった「実体経済型の上昇」です。
この違いを正しく理解することが、今後の判断を左右します。
そして今言えるのはロレックス市場は確実に“上を目指す流れ”に変わったということです。
長い調整を経て、時計市場は新しいサイクルへ。
この上昇がどこまで続くのか、その答えは次の価格改定と世界経済の動向の中にあります。
まとめ
- 中古時計市場が3年ぶりに上昇
- ロレックスは依然として+15%超の価値維持
- 金価格・関税・供給制限が相場を下支え
- 今後も「緩やかな上昇トレンド」が継続する見通し